大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)1553号 判決

被告人 前田純夫 外一名

〔抄 録〕

各所論は要するに原判決には採証の法則に違反して被告人加藤伴平に対して有罪を認めた違法がある旨主張する。然し乍ら、共犯者又は共同被告人の犯罪事実に関する供述が、被告人に対して、独立、完全な証明力(証拠価値)を有するものであることは最高裁判所の判例の存するところである(昭和二九年(あ)第一、〇五六号昭和三三年五月二八日大法廷判決参照)のみならず、原判決が被告人加藤伴平に対する原判示一、の共謀の点を含む全事実認定の証拠として挙示する証拠は、原判決にも明かなように、共犯者たる原審相被告人杉野大の原審公判廷における供述のみに止まらず、同人の検察官に対する昭和二七年六月四日附供述調書第三項、中村政男の検察官に対する昭和二七年六月七日附供述調書外数多の証拠であり、これらを綜合すれば充分に被告人加藤が原判示の如く相被告人前田純夫、原審相被告人杉野大及び鳩谷誠治と共謀の上判示所為に及んだものであることが認められるのであつて、原判決は決して各所論の如く杉野大の供述のみを以つて被告人の負責事実を認めたものではなく、これに加うるに他の挙示証拠を綜合して認めたものである。各所論は独自の見解と謂うの外ない。

(山本謹 渡辺好 石井)

前田純夫の

一審判決の犯罪事実第一の一

被告人杉野大は、昭和二三年九月頃から次の衆議院議員選挙に郷里の千葉県から立候補する意思を固めていた被告人加藤伴平から選挙資金の調達方を依頼せられていたところ、同年一〇月末頃創立早々の会社ではあつたが被告人前田純夫の創立した国土建設工業株式会社が、荒砥建設株式会社がその前から関東地方建設局(以下関東地建と略称)の指名業者として工事をはじめていた利根川口波崎導流堤工事その他二、三の工事を右荒砥建設の下請として事実上やることになつたので、被告人前田に右選挙資金のことを諮つたところ、被告人前田としても工事資金その他に資金を欲していた際で関東地建発行の政府小切手を一時貸して貰えればこれを知合いの金融機関に定期預金として預入しそれとは別途に資金を借り出して一部を国土建設の工事資金に充てると共に一部を被告人加藤のため選挙資金として提供してもよいという意向を示したので、その方法をとることに内意を固め、支出官である被告人加藤及び当時同地建庶務部用地課長として地建管下各工事事務所の工事計画に対応して用地買収及び地上物件移転に関する立案並びに実施の事務を所掌し地上物件移転補償費の小切手を会計課より受取り請求人に交付する事務をも事実上行つていた鳩谷誠治に対しては被告人杉野から各別に話をして承諾を得、茲に被告人杉野、同加藤、同前田並びに右鳩谷の四名は共謀の上、それにより被告人加藤及び同前田をしてそれぞれ前記のとおりの私的用途に充てる資金を入手させる目的で、同年同月九日、千葉県野田市所在の野田醤油株式会社及び総武通運株式会社(以下野田醤油、総武通運と略称)に対する江戸川改修工事に伴う地上物件移転補償金の支払分として同日正規の手続を経て発行された支出官関東地建局長加藤伴平発行名義の金額野田醤油渡しのもの五、四五七、五九八円五〇銭、総武通運渡しのもの六五、六五〇円の小切手二通で鳩谷が前記の業務上保管中のものを、被告人杉野において、これを鳩谷から受取つた上、東京都中央区銀座二丁目四番地所在の国土建設工業株式会社事務所において勝手に被告人前田に交付して、これを横領したものである。

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